探偵事務所と盗撮
探偵事務所は盗撮の罪にならないの?
探偵事務所が行う撮影は、法令を順守し、合法な手段で実施されることが基本です。探偵業務においては、撮影や情報収集は厳密な倫理基準と法的規定に基づいて行われる必要があります。探偵は、調査の過程でプライバシー権を尊重しつつ、法に則った方法で行動することが求められています。
尾行や調査の一環として、対象者の行動を撮影することは一般的な手法ですが、これは違法な盗撮行為とは異なります。探偵事務所が行う撮影は、調査の目的に応じた正当な手段として認められています。たとえ隠し撮りの形式であっても、必ず法的なルールに従い、プライバシー権の侵害を最小限に抑えながら調査が進められます。探偵事務所は、調査の過程で収集した情報が合法的かつ公正な方法で得られたものであることを確保し、依頼者に対して信頼性のある報告書を提供する責任があります。
このように、探偵事務所が行う撮影は、合法かつ倫理的な枠組みの中で行われるべきであり、これにより報告書の信頼性が確保され、依頼者との信頼関係が構築されます。適切な手法での撮影と情報収集は、探偵業務の根幹を成すものであり、依頼者にとって信頼できる調査結果を提供するための重要な要素となります。
「隠し撮りは盗撮ではないの?」
「プライバシーの侵害にならないの?」
探偵事務所による調査や撮影が行われると、対象者やその関係者が驚きや怒りを感じることはよくあります。これには、プライバシーが侵害されたと感じたり、自分の行動が監視されていることに対する違和感が関係しています。個人のプライバシーは大変重要であり、その侵害は多くの場合、強い感情を引き起こすことがあります。
しかし、法的には探偵事務所が合法な手段で調査を行っている場合、それは盗撮やプライバシー侵害には当たりません。探偵業務は、法令に従い、調査対象者の権利を尊重する範囲で行われます。具体的には、調査は法律で認められた方法に基づいて行われ、調査対象者の私生活に過度に踏み込むことなく、目的に応じた必要最小限の情報収集が行われます。
探偵事務所が行う調査は、特定の目的に基づいて行われ、法令に準拠して合法性が確保されています。これにより、調査が適切に行われる限り、法的な問題やプライバシー侵害の問題には発展しないことが期待されます。とはいえ、調査対象者が感じる不安や違和感に対しても、探偵事務所は適切な説明と配慮を行うことが重要です。透明性のあるコミュニケーションを通じて、調査の目的や手法について理解を得ることが、双方の信頼関係を築くためには欠かせません。
盗撮では?
一概に盗撮といっても、犯罪としての盗撮と、単に行為としての盗撮は微妙に異なります。
法的には「犯罪として成立する盗撮とそうでない盗撮がある」と考えられるのです。
犯罪としての盗撮を罰する法律(条例)は次の2つが該当します。
(軽犯罪法)
正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者は、これを拘留又は科料に処する。
(迷惑防止条例)
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせる行為を禁止する。
具体的な基準を言えば、盗撮が「わいせつ目的」または「覗き目的」であるかどうかが犯罪成立の分け目となります。
つまり通常の調査目的である限りは、探偵事務所の隠し撮りは犯罪とまではならないことになります。
但し、依頼を受けて対象者のキャッシュカードの暗証番号情報を撮影するなど、そもそも犯罪(窃盗)に絡む場合は犯罪行為となる可能性があります。
肖像権侵害・人格権侵害では?
探偵事務所の調査活動において、特に肖像権の侵害やプライバシー侵害には十分な注意が必要です。肖像権は、個人が自分の姿や顔写真が無断で使用されることを防ぐための権利であり、プライバシー権の一部として位置づけられています。探偵事務所が調査対象者の肖像を撮影する場合、その行為が肖像権やプライバシーの侵害に該当するかどうかは、撮影の状況や方法によって異なります。
一般的に、探偵事務所による撮影が公共の場で行われ、通行人などが同様にその場面を観察できるような状況では、肖像権侵害やプライバシー侵害の問題は比較的少なくなります。公共の場では、個人の行動や姿が他者に見られることが前提とされるため、通常は法的な問題にはなりにくいとされています。
しかし、プライベートな場での撮影や、撮影対象者が特定の状況でのみ被写体となっている場合には、慎重さが求められます。たとえば、私的な場所やプライバシーが保たれるべき場面での撮影は、肖像権やプライバシー権の侵害に該当する可能性が高まります。こうした場合、撮影が許可されている範囲を超えてしまうと、法的問題が生じることがあり得ます。
このように、合法かつ公正な手段で調査を行う際には、撮影や情報収集の方法について慎重な姿勢が求められます。探偵事務所は、法律と倫理に則った業務を行うことが基本であり、調査の過程でのプライバシーや肖像権の保護にも配慮しなければなりません。これにより、依頼者の期待に応えつつも、調査対象者の権利を尊重する姿勢を維持し、信頼性の高い調査が実施されることが求められます。法令に従い、適切な手法で調査を行うことで、探偵事務所は法的な問題を避けつつ、クライアントに対して誠実なサービスを提供することができます。
~公共の場所では肖像権より「表現の自由」が優先される場合が多い~
探偵が撮影しているのは、例えば対象者の自宅の中などではなく「公共の場所での対象者の行動」です。
表現の自由というものに探偵の調査が含まれるかどうかは微妙ですが、そもそも調査報告書を作成するための写真撮影とも言え、調査報告書は創作物とも言える可能性はあるのではないでしょうか。
(人格権)被写体としての権利でその被写体自身、もしくは所有者の許可なく撮影、描写、公開されない権利。すべての人に認められる。
プライバシーにおける人格権には「許可なく撮影・公開されない権利」というものがあります。
悪質なケースはそもそも探偵業務の範疇を逸脱しているので、通常の探偵事務所の撮影行為がこの人格権侵害に該当することかどうかが問題となるでしょう。