探偵とクーリングオフ
クーリングオフとは
「クーリングオフ」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
クーリングオフとは、一定の条件のもと(例えば契約書を受け取ってから8日間など)で締結した契約を撤回できるという法制度のことで「特定商取引法」という法律により規定されています。
そもそも、一度締結した契約は原則として無かったことにできるものではありません。
契約はビジネスにおける約束事であり、その約束事を誰でも無条件に簡単に撤回できるのであれば、真っ当なビジネスが成り立たなくなってしまいます。
ですので、未成年は基本的に契約の当事者にはなれませんし、別途解約に関する条件が取り決められている場合や、法律によって無効や取消が可能な場合以外、一度交わした契約は有効となるわけです。
しかし、悪徳業者や詐欺業者による悪質な契約が増加し、プロの営業マンのセールストークに素人の消費者が乗せられてしまうなど、いったん交わしてしまった契約を取り消せずに被害を訴えたり泣き寝入りする人もいます。
こういった被害者が増加してしまったということもあり、それを防ぐために世の中は契約よりも消費者側を保護する動きが強まっている傾向にあります。
探偵契約もクーリングオフ可
クーリングオフはもともとは電話販売や訪問販売など特定の業種に限定して適用される法律でしたが、その特定の業種は徐々に拡大されています。
このクーリングオフ制度が現在、探偵業にも適用されています。
探偵事務所という言葉から連想できるように、探偵業は事務所を構えているのが普通です。
ですので、依頼者と契約を交わす時は、事務所まで依頼者に足を運んでもらうのがもっとも一般的な形式となります。
しかし、依頼者が事務所から遠方に居住していたり、予定や時間の都合上、探偵と依頼者が事務所以外の場所(喫茶店等)で待ち合わせて契約を取り交わすという慣習がありました。
この事務所以外での契約が訪問販売に該当するとされ、クーリングオフの適用対象となったわけです。
(依頼者側が探偵を自宅等に呼び出した場合は適用除外)
探偵業に関する法律としてすでに「探偵業法」というものがありますが、契約書の交付や重要事項の説明義務等は記載されているものの、クーリングオフに関する文言は記載されていません。
やはり、探偵業がクーリングオフの対象とされた理由の一つとして、悪徳・悪質な探偵業者による被害が多いことが考えられます。
クーリングオフ制度は探偵にとって痛手?
率直にいって、このクーリングオフの制度は探偵業者によってはかなり厳しいものと言えます。
探偵業におけるクーリングオフは、極端な話、依頼者が例えば1日15時間の浮気調査を7日間頼んだ後でも解約(料金を支払わない)することが可能なのです。
つまり、依頼者は調査の結果を見てから解約するかどうかを決めることができることになります。
そうすると悪質な消費者(依頼者)の場合、浮気調査が空振りで終わったなどで結果が気に入らなかったらクーリングオフするでしょう。
依頼者が望む結果が得られなかったという理由でクーリングオフされた場合どうなるか?
調査員が一週間毎日15時間、どんなに真面目にがんばって仕事をしても、もちろん一銭にもなりません。
逆に調査における経費損失分や費やした時間による機会損失等が生じ、調査員の少ない小規模な探偵事務所ほど大きな痛手となるでしょう。
但し、いくら探偵業者に不利な制度と言っても、依頼者(消費者)が皆このクーリングオフ制度を悪用しようと考えるわけではなく、いたとしてもおそらく一部の悪質な人に限定されるはずです。
そもそもちゃんと事務所に相談者を招いて契約を取り交わせば防げることですので、単に相談・契約担当者のリスク管理の問題と言えるかもしれません。