探偵業法
探偵業法とは
探偵に関わりのない方は「探偵業法」という法律が存在していることをおそらくご存じないかと思います。
この法律は、簡単に言えば探偵業を規制(規正)する法律です。
代表的な項目としては、
・探偵業を営むにあたり管轄警察署への届出義務
・探偵業務の定義づけ
・依頼人との契約書や誓約書の取り交わし義務
・依頼人への重要事項の説明義務
などが挙げられます。
何故この探偵業法が制定されたかというと、以前から探偵業者と依頼人の間のトラブル、特に調査料金に関するトラブルが多かったからです。
昔はどこの誰ともわからない人間やまともに探偵業務を行う気もない人間が探偵と名乗ることも多かったため、詐欺やぼったくりなどが横行していたようですね。
現在はまともな探偵事務所であれば、まず届出は行っていますし、調査契約時の書面取り交わし、重要事項の説明はもちろん行っています。
届出は探偵事務所に行けば見やすい場所に掲示されているはずで、そうでなくとも確認を要求すれば確認することもできます。
もしどこかの探偵事務所に相談に行ったとき、届出が確認できなかったり、契約時の書面取り交わし・重要事項説明のいずれかが欠けていたといたら、その探偵事務所を信用するのは危険だということになります。
探偵業務の定義
探偵業務の定義が探偵業法第二条の条文にあります。
第二条
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。
見方を変えれば、探偵として届出をした場合、どのような仕事ができるかが書かれていることになります。
尾行や張り込みをされたいという方はほとんどいないかと思いますが、探偵は仕事なら尾行・張り込みをしても良いと法律で一応保証されているわけですね。
これは数少ない「探偵だからできること」と言えるのではないでしょうか。
探偵になるには
探偵になりたいという方は、探偵業法第三条と第四条の内容について事前に知っておく必要があります。
第三条(欠格事由)
次の各号のいずれかに該当する者は、探偵業を営んではならない。
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
三 最近五年間に第十五条の規定による処分に違反した者
四 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 (平成三年法律第七十七号)第二条第六号 に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者
五 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号のいずれかに該当するもの
六 法人でその役員のうちに第一号から第四号までのいずれかに該当する者があるもの
欠格事由とは、ここでは探偵業を営む資格を持たない人を指します。
探偵になるための資格は特にありませんが、事務所営業をしてはいけない人もいるということですね。
第四条(探偵業の届出)
探偵業を営もうとする者は、内閣府令で定めるところにより、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に、次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。
一 商号、名称又は氏名及び住所
二 営業所の名称及び所在地並びに当該営業所が主たる営業所である場合にあっては、その旨
三 第一号に掲げる商号、名称若しくは氏名又は前号に掲げる名称のほか、当該営業所において広告又は宣伝をする場合に使用する名称があるときは、当該名称
四 法人にあっては、その役員の氏名及び住所
探偵業を開業する時は、事務所を管轄する警察署(都道府県公安委員会)に届出を出す必要があります。
届出用書類の他、履歴書、住民票、上記欠格事由に該当していないことの証明のため「身分証明書」「登記されていないことの証明書」「誓約書」などの準備も必要です。
依頼者との契約関係
探偵業法第七条と第八条には依頼者との契約時における義務が規定されています。
第七条(書面の交付を受ける義務)
探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、当該依頼者から、当該探偵業務に係る調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければならない。
書面の交付を受ける義務とは、調査結果を犯罪や違法な行為に用いないことを誓約する書面(誓約書)に依頼者にサインしてもらう義務のことです。
誓約書を特に探偵業者に対して書くことを内心では嫌がる方も多いでしょうが、これは法律による義務なのできちんと説明してサインしてもらう必要があるわけです。
第八条(重要事項説明等)
探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該依頼者に対し、次に掲げる事項について書面を交付して説明しなければならない。
一 探偵業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 第四条第三項の書面に記載されている事項
三 探偵業務を行うに当たっては、個人情報の保護に関する法律 (平成十五年法律第五十七号)その他の法令を遵守するものであること。
四 第十条に規定する事項
五 提供することができる探偵業務の内容
六 探偵業務の委託に関する事項
七 探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の概算額及び支払時期
八 契約の解除に関する事項
九 探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する事項
2 探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項について当該契約の内容を明らかにする書面を当該依頼者に交付しなければならない。
一 探偵業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 探偵業務を行う契約の締結を担当した者の氏名及び契約年月日
三 探偵業務に係る調査の内容、期間及び方法
四 探偵業務に係る調査の結果の報告の方法及び期限
五 探偵業務の委託に関する定めがあるときは、その内容
六 探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の額並びにその支払の時期及び方法
七 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
八 探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する定めがあるときは、その内容
重要事項説明とは、文字通り契約における重要事項を依頼者に対して説明しなければならない義務となります。
契約に際し業者側がお客さんに対してしなければならないことの一つであり、これは探偵に限ったことではないですね。
1.重要事項について説明する書面(重要事項説明書)
2.契約内容について書かれた書面(契約書)
実際に契約を締結するときは上記2つの書面を依頼者に対して交付することになります。
探偵業法の改正(令和6年4月1日施行)
探偵業の業務の適正化に関する法律の改正の要点について
探偵業の業務の適正化に関する法律が改正され、探偵業届出証明書が廃止されます。
施行日以降は標識を作成し、営業所の見やすい場所に掲示するとともに、ウェブサイト上においても標識を掲示することになります。
施行日
令和6年4月1日
標識について
標識は、内閣府令により様式が定められており、探偵業者自ら作成することになります。
様式には、「届出書を提出した公安委員会」「届出書の受理番号」「届出書を提出した年月日」「商号、名称又は氏名」「営業所の名称」「営業所の所在地」「営業所の種別」「広告又は宣伝をする場合に使用する名称」を記載することとなっています。
標識の掲示
営業所への掲示
営業所の見やすい場所に標識を掲示してください。
ウェブサイト上への掲示
探偵業者のウェブサイトのトップページに標識を表示する、「標識はこちら」などと表示して、PDF等に変換した標識データを表示する等、消費者の見やすい場所に掲載してください。
ただし、
- 常時使用する従業者の数が5人以下である場合
- 当該探偵業者が管理するウェブサイトを有していない場合
のいずれかに該当する場合は、ウェブサイトへの掲示義務は除外されます。