「探偵事務所のリアル」ドラマと違う?知っておきたい探偵の仕事

・ 実際の探偵における情報収集・調査方法

ドラマでは、探偵は派手なアクションや推理で事件を解決するイメージがありますが、実際の調査は地道な作業の積み重ねです。主な調査方法は以下の通りです。

1. 尾行

・徒歩尾行

:人混みの中では、対象者との距離を一定に保ちつつ、他の通行人に紛れるように自然に歩きます。
:建物内では、エレベーターや階段の利用、ドアの開閉時などに注意し、不自然な動きを避けます。
:対象者が急に立ち止まったり、振り返ったりすることに備え、常に周囲の状況を把握し、臨機応変に対応する必要があります。
:服装も重要で、目立たない服装、周囲に溶け込む服装を心掛けます。季節や場所に合わせて服装を変えることも重要です。

・車両尾行

:対象者の車両と適度な車間距離を保ち、他の一般車両に紛れるように走行します。
:交通法規を遵守し、安全運転を徹底します。無理な追跡は事故につながる可能性があり、厳禁です。
:対象者が急に車線変更したり、速度を上げたり、あるいは意図的に撒こうとしたりする場合に備え、高い運転技術と状況判断能力が求められます。
:尾行車両も目立たない車種を選ぶことが重要です。

・複数人尾行

:複数人で交代しながら尾行することで、対象者に気づかれにくくします。
:無線機や携帯電話などを活用し、綿密な連携を取りながら行動します。
:役割分担(例えば、先回り、後方確認、証拠撮影など)を明確にすることで、効率的な尾行が可能になります。
:人数が多いと逆に目立つ場合もあるため、状況に応じて最適な人数を判断する必要があります。

・尾行時の注意点

:対象者の行動パターンを事前に把握しておくことが重要で
:周囲の状況(人通り、交通量、天候など)に合わせて、尾行方法を臨機応変に変更する必要がありま
:対象者に気づかれた場合は、無理に尾行を続けず、一旦中止し、後日改めて行うなどの判断も必要です。

2. 張り込み

・車両張り込み

:対象者の自宅や関係先が見える場所に車両を停車し、車内から監視します。
:周囲に不審に思われないように、新聞を読んだり、地図を見たりするなど、カモフラージュを行うこともあります。
:長時間同じ場所に停車していると不審に思われるため、適宜場所を変えるなどの工夫が必要です。

・拠点張り込み

:対象者の自宅や関係先の近くの建物や部屋などを一時的に借り、そこから監視します。
:ビデオカメラや望遠レンズなどの機材を使用し、詳細な状況を記録します。
:近隣住民に不審に思われないよう、細心の注意が必要です。

・張り込み時の注意点

:長時間の張り込みは、体力的にも精神的にも負担が大きいため、適度に休憩を取り、体調管理に注意する必要があります。
:周囲の住民や通行人に不審に思われないよう、自然な行動を心掛ける必要があります。
:トイレや食事などの対策も事前に考えておく必要があります

3. 聞き込み

・近隣聞き込み:
:対象者の自宅周辺の住民に、対象者の人柄、生活状況、家族構成などを聞きます。
:世間話から入り、徐々に本題に入るように、会話の流れを意識します。
:個人情報保護の観点から、相手に不快感を与えないように細心の注意が必要です。

・関係先聞き込み

:対象者の勤務先、取引先、学校などに、対象者の仕事ぶり、人間関係、学業成績などを聞きます。
:事前に相手の情報を調べておき、適切な質問をするように心掛けます。
:相手に警戒される可能性があるため、身分を偽ったり、嘘をついたりする行為は厳禁です。

・聞き込み時の注意点

:相手に警戒されないよう、丁寧な言葉遣いを心掛け、誠実な態度で接することが重要です。
:個人情報やプライバシーに関わる質問は、慎重に行う必要があります。
:得られた情報は、鵜呑みにせず、他の情報と照らし合わせて真偽を確認する必要があります。

4. 情報収集

・インターネット検索

:氏名、住所、電話番号などで検索し、公開されている情報を収集します。
:SNS、ブログ、掲示板なども活用し、対象者の交友関係、趣味、過去の言動などを把握します。
:インターネット上の情報は、必ずしも正確とは限らないため、情報の真偽を確かめる必要があります。

・公的資料の調査

:戸籍謄本、住民票、不動産登記簿謄本、商業登記簿謄本などを取得し、対象者の身分関係、住所、家族構成、財産状況、会社情報などを確認します。
:これらの資料を取得するには、法律で定められた正当な理由が必要です。不正な手段で取得することは違法行為となります。

・データベースの利用

:探偵業者が利用できるデータベース(法的に許された範囲のものに限る)を活用し、対象者の情報を収集します。

・情報収集時の注意点

:個人情報保護法などの法律を遵守し、違法な情報収集を行わないことが重要で
:収集した情報は、適切に管理し、漏洩することのないように注意する必要があります。

5. 撮影

・証拠撮影

:不貞行為、不正行為、犯罪行為などの証拠となる写真や動画を撮影します。
:日時、場所、状況などが明確に記録されていることが重要です。
:暗い場所での撮影に備え、高感度カメラや暗視カメラなどを使用することもあります。

・行動撮影

:対象者の行動を記録し、報告書に添付するための写真や動画を撮影します。
:長時間の撮影になる場合は、バッテリーや記録容量に注意が必要です。

・撮影時の注意点

:プライバシー侵害にならないよう、撮影場所や撮影方法に十分注意する必要があります。
:盗撮や不法侵入などの違法行為は厳禁です。
:撮影したデータは、適切に管理し、漏洩することのないように注意する必要があります。

・調査後の業務

ドラマと実際の探偵の、特に調査後の業務、具体的には証拠写真の扱い方や報告書作成について、詳しくご説明いたします。ドラマでは調査が完了した時点で物語が終わることが多いですが、実際の探偵業務は調査後も重要な作業が残っています。

1. 証拠写真・動画の整理と選定

・データ整理

:撮影日時、場所、対象者、状況などを記録したメタデータを付与し、検索や整理が容易になるようにします。
:ファイル名を規則的に命名することで、管理しやすくします。(例:日付_場所_対象者_連番)
:異なるカメラや機器で撮影したデータは、一つのフォルダにまとめて管理します。

・証拠選定

:調査目的に合致する写真・動画を選定します。
:鮮明で、日時・場所・状況が明確に写っているものを選びます。
:対象者の顔や行動が特定できるか、状況証拠として有効かなどを考慮します。
:同じ場面を複数枚撮影している場合は、最も鮮明なものを選びます。

・画像・動画処理

:証拠能力を損なわない範囲で、トリミング、明るさ調整、コントラスト調整などを行います。
:顔にモザイクをかけるなど、プライバシー保護のための処理を行う場合もあります。
:改ざんとみなされるような加工(合成、削除など)は絶対に行いません。

・データ保存

:選定した写真・動画データは、DVD-R、USBメモリ、外付けHDDなどにバックアップします。
:原本データとは別に、報告書添付用のデータを作成します。

2. 報告書作成

・報告書の構成

:表紙: 依頼者名、調査対象者名、調査期間、報告書作成日などを記載します。
:目次: 報告書の構成を示します。
:調査概要: 依頼内容、調査目的、調査方法などを簡潔に記述します。
:調査経過: 時系列に沿って、調査の状況を詳細に記述します。日時、場所、対象者の行動などを具体的に記載します。
:証拠資料: 選定した写真・動画データを添付します。各写真・動画には、日時、場所、状況などを説明するキャプションを付記します。
:考察: 調査結果から推測される事実や状況を記述します。ただし、憶測や断定的な表現は避け、客観的な事実に基づいて記述します。
:結論: 調査結果の要点をまとめます。

・報告書作成のポイント

:客観的な事実に基づき、正確に記述します。
:専門用語は避け、分かりやすく簡潔に記述します。
:誤字脱字、文法の間違いがないか、十分に確認します。
:証拠写真・動画と報告書の内容に矛盾がないように注意します。

3. 依頼者への報告

・報告時の注意点

:調査結果を丁寧に説明し、依頼者の質問に誠実に答えます。
:法律的なアドバイスを行う場合は、弁護士などの専門家を紹介します。
:依頼者の心情に配慮し、プライバシーに関わる情報は慎重に扱います。
:今後の対応について、具体的なアドバイスを行う場合もあります。

4. 法的手続きへの連携

・弁護士への情報提供

:調査報告書、証拠写真・動画データなどを弁護士に提供します。
:調査の経緯や状況を説明し、弁護士の質問に答えます。

・裁判所への証拠提出

:裁判所に証拠を提出する際は、適切な方法で提出します。
:証拠説明書を作成し、証拠の関連性を説明します。

5. 情報管理とプライバシー保護

・情報管理体制の構築

:情報管理責任者を定め、情報管理に関するルールを明確にします。
:データは暗号化し、アクセス権限を制限します。
:不要になったデータは、適切な方法で消去します。

・従業員教育

:従業員に対し、情報管理およびプライバシー保護に関する教育を徹底します。
:守秘義務契約を締結し、情報漏洩防止を徹底します。

・探偵の仕事の厳しさや倫理観の重要性

1. 仕事の厳しさ

ドラマでは省略されがちな、実際の探偵業務における様々な厳しさを解説します。

・体力的な負担の詳細

:長時間の拘束: 尾行や張り込みは、数時間から数日に及ぶことも珍しくありません。特に張り込みでは、同じ場所で長時間待機する必要があり、体力的にも精神的にも大きな負担となります。
:悪天候下での作業: 雨の日も風の日も、真夏の日差しの中や真冬の寒空の下でも、調査は行われます。体調管理には十分な注意が必要です。
:不規則な移動: 対象者の行動は予測不可能であり、急な移動や長距離の移動を強いられることがあります。公共交通機関が利用できない時間帯や場所での移動を強いられることもあります。
:体調不良時の対応: 体調が悪くても、調査を中断できない場合があります。自己管理能力が重要となります。

・精神的な負担の詳細

:常に緊張状態: 対象者に気づかれないように、常に周囲に気を配り、緊張状態を維持する必要があります。些細なミスが調査の失敗につながるため、プレッシャーは非常に大きいです。
:情報収集の難航: 調査が思うように進まず、情報が得られない場合、精神的に追い詰められることがあります。情報収集の戦略を立て直し、粘り強く調査を続ける精神力が必要です。
:依頼者の感情への配慮: 浮気調査や身元調査など、依頼者の個人的な問題に関わる調査では、依頼者の辛い状況を目の当たりにすることがあります。依頼者の感情に寄り添いながらも、客観的に調査を進めるバランス感覚が求められます。
:危険な状況への遭遇: 調査対象者によっては、反発を受けたり、脅迫されたり、暴力行為に及ばれたりするリスクもあります。身の安全を確保するための危機管理能力も必要です。

・時間的な不規則性の詳細

:深夜・早朝の調査: 対象者の行動によっては、深夜や早朝に調査を行う必要が出てきます。睡眠不足や生活リズムの乱れにつながることもあります。
:休日出勤: 土日祝日に関係なく、調査を行う必要が出てきます。家族や友人との時間を取りづらくなることもあります。
:緊急性の高い依頼への対応: 緊急性の高い依頼が入った場合は、予定を大幅に変更して対応する必要があります。

・孤独な作業の詳細

:単独行動の多さ: 尾行や張り込みなどの調査は、基本的に一人で行うことが多いため、孤独を感じやすいです。
:相談相手の少なさ: 調査内容は機密情報であるため、気軽に相談できる相手が限られています。精神的なストレスを抱え込みやすい状況と言えます。

・収入の不安定さの詳細

:依頼件数の変動: 依頼件数は時期や景気によって変動するため、安定した収入を得るのが難しい場合があります。
:調査期間の長期化: 調査が長期化すると、収入を得るまでの期間が長くなります。
:競合の激化: 探偵業者は増加傾向にあり、競合が激化しています。価格競争に巻き込まれることもあります。

2. 倫理観の重要性

探偵業は、高度な倫理観が求められる職業です。倫理観の欠如は、依頼者だけでなく社会全体に大きな悪影響を及ぼします。

・法令遵守

:探偵業法: 探偵業の業務の適正化に関する法律は、探偵業の業務範囲や禁止事項などを定めています。この法律を遵守することは、探偵業を営む上での最低限のルールです。
:個人情報保護法: 個人情報を取得、利用、管理する際には、個人情報保護法を遵守する必要があります。不適切な情報収集や漏洩は、法的責任を問われる可能性があります。
:プライバシー侵害: 必要以上の情報収集や、私生活に過度に立ち入る行為は、プライバシー侵害となる可能性があります。
:ストーカー規制法: 尾行や張り込みが、ストーカー行為とみなされる場合もあります。法律に抵触しないよう、十分な注意が必要です。

・プライバシーの尊重

:必要最小限の情報収集: 調査に必要な情報のみを収集し、不必要な情報まで詮索してはいけません。
:情報の適切な管理: 収集した情報は厳重に管理し、第三者に漏洩してはいけません。
:調査目的以外での情報利用の禁止: 調査で得た情報を、本来の目的以外で利用してはいけません。

・人権の尊重

:差別的調査の禁止: 人種、性別、宗教、社会的地位などに基づく差別的な調査を行ってはいけません。
:名誉毀損の禁止: 個人の名誉や信用を毀損するような調査や情報提供を行ってはいけません。
:不当な圧力の禁止: 調査対象者や関係者に対し、脅迫や強要などの不当な圧力を加えてはいけません。

・依頼者との適切な関係

:契約内容の明確化: 調査内容、費用、期間などを明確にした契約書を作成し、依頼者と合意する必要があります。
:進捗状況の報告: 調査の進捗状況を定期的に依頼者に報告し、不安を与えないように配慮する必要があります。
:秘密保持義務: 依頼者から得た情報や調査内容は、厳守する必要があります。

・自己管理

:倫理研修の受講: 倫理観を高めるための研修を積極的に受講することが望ましいです。
:倫理規定の遵守: 探偵業協会などが定める倫理規定を遵守し、業務を行う必要があります。
:第三者への相談: 倫理的に判断に迷う場合は、弁護士や経験豊富な同業者などに相談し、適切なアドバイスを求めることが重要です。